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巨大データセンターの裏側 その2

http://www.nytimes.com/2009/06/14/magazine/14search-t.html?_r=1&ref=internet&pagewanted=all

クラウドの内側

ワシントン州Tukwilaにあるマイクロソフトのデータセンターは、ベージュ色の箱型の地味な建物の中にある。当時マイクロソフトのデータセンターサービスのGMのマイケル・マノスは、一緒にデータセンター見学に出かけたぼくに、普通の人には単なる巨大な倉庫に見えるだろうが、専門家だったら、外側を見ただけで、データセンターとわかると言った。

「まず大量のカメラ。そして張りめぐらされた電線」と彼は壁面の銀色のフルート上のパイプの集まりを指差した。

「これは煙突で、この背後に発電機があることがわかる。」これは、UPS(無停止電力供給)電池の巨大な貯蔵庫のようなもので、データセンターが常に円滑に運用されることを確実にするために、電圧の急激な変化や停電を回避するための装置だ。

ロビーで生体認証のために手のひらをスキャンして、センサーだらけで、複数の人間ねずみとりのような場所を抜けると、インターネットを動かしている、専用ハードウェアであるサーバでいっぱいの黒いラックが図書館の棚のように並ぶ明るい白っぽい部屋に入った。

このTukwilaのデータセンターはたまたま、マイクロソフトXboxライブのグローバルな拠点の一つになっている。このぶんぶんいっているマシンの中に、ぼくの想像上の都市が存在しているのだ。

他のほとんどのデータセンターと同じように、Tukwilaのデータセンターは、サーバー、ロードバランサールーター、ファイアーウォール、テープバックアップ用のライブラリー、データベース用マシンなどが無造作に置かれている。こういった多くの機器が白いタイルが敷き詰められた、棟上げフロアに設置されている。そしてフロアの下には、電力ケーブルの束が整然と走っている。

サーバを冷やし続けるために、ここでも、他のデータセンターと同様に、ホットアイル・コールドアイルと呼ばれる仕組がある。正面の穴のあいたタイルからにじみ出る冷たい空気がサーバーを通じてファンによって吸い込まれ、ラックの裏側のスペースへ噴出され、上方から通気されるのだ。こういったマシンの騒音はダイソン製のエアーブレードハンドドライヤーの中に頭をつっこんだようなうるささといえばイメージできるかもしれない。

建物の外見にはほとんど気は使われていない。データセンターの文脈でのアーキテクチャという言葉も混乱を招くことが多い。データセンターの世界においては、アーキテクチャは多義的に用いられ、建物、ネットワークあるいはサーバー上で走っているソフトウェアをすべてあらわすことになる。

米国最大のデータセンタースペースのプロバイダであるDigital Realty Trust(データセンターREIT)のSVPであるクリス・クロスビーは、自社のデータセンターを車にたとえ、モデル番号ごとに行われる組み立てラインによる製造にたとえた。「モデル番号によって、このファシリティの内部でどれだけの電力が利用可能かがわかる。」彼はまた、「データセンターの工業型設計industrialization」というようなことを、サーバ設計のホワイトボードモデルに比較した。データセンターは、自動車同様に立地する場所で、組み立て製造されるのだ。データセンターは「我々の時代の鉄道のようなもので、どんな種類の汽車がそのうえを走るかはどうでもいいのだ。」と彼は言う。

この場所では、他の巨大データセンターと同様に、コンピューティング用の機械群は、裏方と呼ばれる人々がサポートしている。冷却装置、何マイルもの蓄電池用のスプリング、センター内に精緻にはりめぐらされたパイプのネットワークなどだ。2.5MWのディーゼル発電のキャタピラ発電機がある。これは風のトンネルと呼ばれる穴だらけのスペースの端につながっている。このトンネルを通じて、発電機を冷却するための空気が流れることになる。

クラウドといっても白くてふわふわしたものなどが存在するわけではなく、その実態はコンピュータやディーゼル発電機だらけの巨大ビルディングなのだ。」と案内をしてくれるマノスは言う。

Tukwilaは、マイクロソフトとしてはどちらかといえば、小さなデータセンターの一つだ。2006年に、マイクロソフトは、安価な水力発電、税優遇策、良質の光ファイバーネットワークという利点から、ツクウィラから車で3時間のワシントン州のクインシーという小さな町に、50万平方フィートのデータセンターを建築した。

今年の夏には、マイクロソフトは世界最大級の70万平方フィート超のデータセンターをシカゴにオープンした。

現在、マイクロソフトのデータセンターの面積は、2004年当時の3,4倍になっている。

マイクロソフトのような巨大企業になると、特定のデータセンターが何の目的用かということを外部の人間が区別するのは困難だ。セキュリティや競争上の理由などから、企業は詳細を話したがらない。
クインシーのデータセンターは6兆7500万枚の写真を収容できるというぐらいのおおざっぱな情報なら、少しは明かしてくれるけれども、それ以上は無理だ。

マイクロソフトは、大規模のオンライン資産が200以上もあり、さらにホットメールのユーザーが3億7500万人で、検索要求件数は月30億件で、さらにメッセンジャーサービスには数億人のユーザーいる。こういったオンライン資産が、マイクロソフトにとってどれだけ巨大かつ重要かはすぐに理解できるはずだ。

時折、インターネット上で、こういった企業秘密が垣間見られる場合がある。あるブログに、マイクロソフトの社内プレゼンが掲載された。それによると同社のサーバ数は15万台(月間サーバ増加数が1万台と予想されるので、今ではこの台数はもっと大きくなっているはずだ)で、そのうち約8万台が、Bingという検索アプリケーション用なのだ。検索というのは平均的なデータセンターの中で大きな位置を占めるようになっているという。(その3に続く)