21世紀ラジオ (Radio@21)

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巨大データセンターの裏側 その1

クラウドコンピューティングの裏側の真実は、データセンターにある。そんなことをいつも考えていたら、ニューヨークタイムスに、マイクロソフトのデータセンターツアーを行ったTom Vanderbiltの「Datacenter Overload」というちょっと長めのコラムが載った。

http://www.nytimes.com/2009/06/14/magazine/14search-t.html?_r=1&ref=internet&pagewanted=all

それはXboxゲームから始まった。

ブルックリンのある雨の夜、ぼくは友人の家で、世界大戦ゲームに興じていた。ゲームのメニューをスクロールしていたら、Xboxライブのスクリーンに気づいた。この機能を使えば、離れた場所にいるユーザーとブロードバンド経由でゲームをやることができるのだ。オンライン上のこのゲームのプレイヤー数はなんと6万6000人以上だった。

帰宅する間中、この膨大な数字のことを反芻した。6万6000といえば、インディアナ州の小さな都市ぐらいの人口だ。この視えない大都市の住民は、どんな人々でどこにあるのか。この天空の都市を創造するために必要なインフラは何なのか。

普通は、インフラのことなど関心をもつ人はいない。インフラというのはうまく機能しなくなったときにだけ、人々の関心を呼び起こすのだ。瞬時にグーグルの検索結果が現れたときには、皆驚いたものだが、今では、あたりまえのことになってしまった。しかも、グーグルのような技術が私たちの生活の水先案内をするようになっている。コンピューティングインフラなしには1日たりとも暮らせないようになっているのだ。

生活に必要なものは、どんどん非物質的になって、広範な空間に存在する、視えないネットワークにアウトソースされるようになった。たとえば、手紙の束は、自分のコンピュータ内のEメールのデータベースになり、その後、ウェブ上のホットメールやGメールに置き換わっている。

友人に、コピーした記事のPDFを送ると、それがウェブ上に共有ブックマークされる。机の中の写真をデジタル化され、サイト上にホストされるようになる。昔は、部屋中に積み上げられ、山となっていたCDは、MP3の中にすべて収容され、最後には、パンドラのようなウェブサービスに道を譲っている。

昔は、身近に存在したこういったモノは、情報に形を変えて、ウェブ上のどこかに収容されている。しかし、実際、そういった情報はどこに置かれているのだろうか。

具体的には、こういった情報のすべてが、巨大なデータセンターの中に収容されている。だから、巨大で、強力で、常時稼働しているデーターセンターが続々と登場するようになっているのだ。そしてこういったセンターで100万のユーザーを擁するような巨大なソフトウェアアプリケーションの運用が行われているのだ。

なぜこんな規模のストレージや通信容量が必要になっているのかを理解するのに、自分たちの生活がどれほどデジタル化しているかを見てみるのがいいだろう。

ぼくはデジタルカメラで撮った写真を共有するウェブサイトのFlickrに自分が撮った写真を載せている。この会社はヤフーが所有しており、サーバはおそらくワシントン州のウェナチーにある、ヤフーのデータセンターに収容されている。

ウィキペディアのぼくについての記載は、フロリダ州タンパに置かれている。

グーグルの本社で、ぼくが行った対談についてのユーチューブ上のビデオはオレゴン州ダレスからノースカロライナ州のレノワールまでのデータセンターのどこかに収容されているはずだ。

リンクドインのプロフィールはおそらくイリノイ州のエルクグローブビレッジにあるエキニクスが運用しているデータセンター内にある。

そして私のブログはモンタナ州ミズーラにあるモッドウェストの本社にある。

これらのサイトのうちの一つでもダウンしたなら、ぼくは即座に不満をツイッターで発信するだろう。僕のツイートは間違いなく、バージニアスターリングにある米国NTTのデータセンターにバーチャルトリップするはずだ。さらに、いずれの場合においても、少なくとも、1個のバックアップ用のデータセンターがどこか別の場所にある。

相互依存しているデータシステムの広範かつ分散したネットワークのことを、なんとも言えぬ雰囲気を伝える、クラウドという比喩によって呼ばれるのは不思議ではない。ただクラウドの位置関係を地図にしようとするのは困難だ。特に、データセンターというものが、セキュリティ上の理由で、住所を明らかに開示していないということもあって、地図作成はかなり厄介である。データセンター業界で最初に守らねばならないルールが、データセンターについて話さないことらしいのだ。

しかしデータセンターが次第に、企業や社会にとっての中枢神経のようになるにつれて、僕たちが気晴らしにシェアするユーチューブ上のビデオクリップも、企業の基幹システム同様、多くの容量と品質を要求するようになるのだ。

エネルギー効率や、その他の資源効率の観点から、もっとも低いコストで、最大限のコンピューティングパワーを生み出すニーズが急増しているのである。こういったことは、以前は、人々の目につかないところに隠れていたが、今では、多くの人々の関心をひくようになっている。PCの前であなたが何かを検索すると、その作業は、昔は畑か何かだった場所に立っている、巨大な建物の中に、詰め込まれ、1年中、やすむことなく、うなりを上げているサーバの中で行われているのだ。(その2に続く)