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Tim Berners-Leeの魔法の大冒険

インターネットの歴史がそれほど長くはないとしても、やはり、時には、その起源だとか創世記が気になるものだ。今、グーグルのエバンジェリストになったVinton Cerfが、Tim Berners-Leeのインターネットの短い歴史の中で果たした大きな役割について、小さなコラムを載せている。西部劇映画で良くある、焚き火を囲んで、大人がぽつぽつと語る、口数の少ない昔話のような文章だ。

タイムからのツイート。

インターネットのビッグバン
http://www.time.com/time/specials/packages/printout/0,29239,1902809_1902810_1905184,00.html

私はトム・スイフト物のSF冒険物語を読んで大きくなった。それにならって、ウェブのこれまでの物語を振り返ってみると、ティム・バーナーズ・リーと彼のワールドワイドウェブマシンという題名でもつけたくなる。

ティムが1989年にジュネーブにある欧州原子核研究所であるCERNでRobert Calliauと働き始めた当時は、インターネットはようやく商用サービスの体裁をととのえはじめたころだった。当時のインターネットには、情報のフォーマット、ストレージ、locate、読み出しなどについての標準化しくみがなかった。

ティムは、自ら、こういった欠落を埋めていったのである。

最初に彼は、ハイパーテキストトランスファープロトコル(HTTP)という、インターネット上でドキュメントを交信するためのコンピュータ言語を書き、それらのドキュメントに住所を与えるしくみを設計することでこういった問題を解決した。

彼はまたワールドワイドウェブと呼ばれる最初のブラウザや、ウェブページ作成用の言語(ハイパーテキストマークアップランゲージHTML)とこれらのページを貯蔵し、他人にアクセス可能にするための最初のサーバーソフトウェアなどを続々と作り上げた。

他の皆と同じで、私も当時起こっていた、こういった歴史的発展のことなど全く想像もしていなかった。実際、初めて私が、ウェブというものに関心を持ったのは、Marc AndreessenとEric Binaがモザイクと呼ばれる彼らのグラフィック的なブラウザを発表した、1993年の初めの頃だった。

モザイクが当時のインターネットコミュニティに与えた驚愕の大きさを今は想像もできないだろう。当時の私たちは、コンテンツを取りだすのにテキストベースのツールやキーボードによる操作に慣れ切っていたのである。

PCスクリーン上に画像と雑誌のようなレイアウトを付け加えたことで、インターネットは突如、巨大な出版用マシンに変わり、情報創造用エンジンとなったのだ。

こういった出来事は、たとえるならば、中世に、新しい技術に基づいて、新しいギルドが生み出されたようなものだった。過去に発明された事実上すべてのメディアがインターネットを通じて表示されるようになり、ユーザーはこの情報を過去のメディアである、本、ラジオ、テレビ、新聞がかつて提供できなかったような方法で交信することができるようになったのである。

ワールドワイドウェブを経由してインターネットに情報の大津波が流れこんだので、情報の大海原の中から、必要なコンテンツを見つけ出すための新しいツールが必要になった。それに対応して、いくつかの検索エンジンが生まれ、グーグルやヤフーのような巨大企業が誕生することになった。

多くの発明に関してあてはまることだが、発明の条件というものがひとたび充足されると、そのテーマに基づいて多くの変形版が登場し、その過程で生み出された新しい宇宙の中で交流、競争、発展を遂げることになる。

私が知っている多くの発明家たち同様に、ティム(今やSirと呼ばねばならない)は、控えめだが、情熱的に、彼が生み出したこの宇宙をさらに一層進化させることにコミットしている。

MITのワールドワイドウェブコンソーシアムの長として、彼は引き続きウェブの新しい能力の開発を続けている。最近の彼の情熱は、現在の検索エンジンには発見不能なインターネット上の巨大データベースのコンテンツを明らかにする方法を見つけることだ。このセマンティックウェブの探究は、彼のワールドワイドウェブの発明以上に重要なものとなる可能性がある。この分野での成功は、情報技術の歴史にまた新しい1章を付け加えることになるだろう。(以上)

Semantic Webというのは、以前から気になっていて、調べても、どうも頭にすっきりとおさまらない言葉だ。

例えば、e-wordというサイトの定義を見ると、
http://e-words.jp/w/E382BBE3839EE383B3E38386E382A3E38383E382AFE382A6E382A7E38396.html

セマンティックウェブとは、Webページおよびその中に記述された内容について、それが何を意味するかを表す情報(メタデータ)を一定の規則に従って付加することで、コンピュータが効率よく情報を収集・解釈できるようにする構想。インターネットを単なるデータの集合から知識のデータベースに進化させようという試みがセマンティックウェブである。」とわかったようなわからないような気分にさせられる。

さらに、
「 現在のWebページはHTMLなどを用いて記述されており、ページやその中に記された個々の情報について、それが何を意味するのかコンピュータが自動的に検知する術がほとんど無く、情報の検索や活用がごく原始的・単純なレベルに留まっている。セマンティックウェブでは、情報を記述する際に必ずそれが何を意味するかを表すデータを付与することで、より複雑で精度の高い検索を可能にしたり、特定の種類の情報を収集して活用することができるようになる。」と続けられても、そのもやもや感はおさまらない。

プログラマーには結局、インターネットの本質のところはわからないのかなあと少し淋しい気持ちになる。グーグルしていたらTim Berners-Leeに対する長いPodcastインタビューの口述筆記が載っていたので、読んでいたら、

I think the Semantic Web is such a broad set of technologies and is going to do so many different things for different people. It is really difficult to put it on one thing.
セマンティックウェブは極めて広汎なテクノロジーを含んでおり、異なる人々にとって多くの異なることを意味するようになっている。ひとつの定義でそれを説明するのは極めて困難になっている。)

という、発言があった。言葉自体が、さまざまな文脈で、多義性を帯びていくというよくある話だ。でも、だからといって、ハッピーな気分になったわけじゃない。しばらく、じっくり、彼の発言などを読んだりしていこうかな。