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イランのバリケードの中で、ツイッターが学んだ6つの事柄

米国メディアの中では、イラン国内で何が本当に起こっているかということよりは、米国発のリアルタイムの通信ツールツイッターを代表とされる、新しい通信手段がどのように利用可能かという方への関心が強いように思われてならない。 ぼくが、テクノロジー関連の記事ばかり読みがちであるという点を割り引いても、そんな気がする。 まさに、わくわくするケーススタディとでもいうような。

イラン国内の正義や不正義とは無縁のところで、新しい技術に関するケーススタディ的思考は蓄積されていく。

ニューヨークタイムスの、「イランのバリケードの中で、ツイッターに関して学んだ6つの事柄」というNoam Cohen署名の記事。(Twitter on the Barricades in Iran: Six Lessons Learned )

http://www.nytimes.com/2009/06/21/weekinreview/21cohenweb.html?ref=technology&pagewanted=print

政治的革命には、その方向性に大きな影響を及ぼした、固有の通信手段というものがある。アメリカ革命の場合は、アメリカ植民地人の心を反英国へと糾合、鼓舞した、大量のパンフレットだ。これらの小冊子によって革命が引き起こされたとまでは言えないが、革命の進展に多いに役に立ったことだけは確かだ。

きわだって21世紀的現象といえる、ソーシャルネットワーキングは、既に、グルジア共和国、エジプト、アイスランドなどで起こった反政府運動の役にたっているようだ。そして、最新のツールツイッターは直近数か月に起こった2つの大衆蜂起の中で利用されたことが注目された。4月のモルドバと、先週のイランだ。

しかし、こういった直近の二つの出来事に貼られたツイッター革命というレッテルは少々買いかぶりすぎの感がある。懐疑的な人々は、イランでもツイッターは反対運動のごく少数のリーダーたちだけが使っただけで、むしろテキストメッセージや、旧式の口コミや、ペルシア語のウェブサイトなどの方が影響力があったと推測している。

ただツイッターがグローバルな世論の支持を求める、反対派と政府の間のいたちごっこにとっては重要なツールになることがわかった。イラン政府が、ジャーナリストの取材制限を行ったのため、反対派はツイッターの迅速な通信システムを使って、今回の運動関連のビデオ、写真、テキストを一般大衆とジャーナリストの両方に送ったのである。

ツイッター革命などというほどのレベルではないかもしれない。ただ、先週は、生まれて3年程度で、爆発的な成長を遂げているこのテクノロジーの強さと弱さについて学習を積むことができた。

1. Twitter Is a Tool and Thus Difficult to Censor
ツイッターツールなので、検閲が困難)

ツイッターフェイスブックマイスペースのようなソーシャルネットワーキングサイトとは違うものをめざしている。1つのウェブサイトを中心とする自己充足的世界を目指すでのではなく、いつでも、どこでも、どこからでも人々が相互に通信できる、Eメールのようなツールになることを目指しているようだ。

ツイートとよばれる140字のメッセージを送るために、ツイッターのホームサイトに行く必要はない。ツイートは、携帯電話やブロッギングソフトウェアからも発信可能である。同様に、ツイートはテキストメッセージや、友人のフェイスブックのページでの状況アップデートなどのように、リモートな状態でも読むことができる。

単独のウェブサイトとして運用されている分、権力から拘束されやすい、フェイスブックとは違って、ツイッタードットコムを閉鎖しても、反政府的なツイッター活動を止めることはほとんど不可能なのだ。閉鎖するには、メンテナンス用にツイッターが自ら行っているようにサービス全体を止めなくてはならない。

2. Tweets Are Generally Banal, but Watch Out
(ツイートは通常はありふれたものである。しかしあなどってはいけない。)

インターネットを研究しているハーバード大学の法学教授ジョナサン・ジットレンは
ツイッターの無意味inaneで、生煮えhalf-bakedに見えるその性格こそがこそが、その強さなのだ。」という。

すなわち、ツイート一つ一つは、取るに足らないような代物である。それぞれはオリジナルでもないし、脅威を与えるようなものでもない。イランの反政府運動を宣伝したツイッターアカウントも、ほとんどは、他のサイトに掲載されている写真へのリンクか、戦略についての簡単なアップデートだけだった。個々のアップデートはあまり重要じゃない。しかしながら、集合的には、ツイートはその瞬間の人々の感情を反映する、一種の人格や環境を生み出し、世論を促進する役にたつたのだ。

3. Buyer Beware
(情報の受け手側は、その真偽について気をつけなくてはならない。)

ツイッター上にある情報は、誰かが裏を取っているわけではない。ユーザーは、経験的に、特定のツイッターアカウントが信頼できることを学ぶことはできる。しかしそれは信頼するかどうかという問題であることに変わりはない。

ツイッターテヘランから直接に情報を得るのに役にはたった。しかし同時に、不正確な情報や偽情報を流した場合もあるようだ。 True/Slantというウェブサイトには、ツイッター上で発信され、ブロガーたちによってすぐに繰り返され、増幅された情報の中で最大の間違いだったものについて説明している。

たとえば、先週、テヘランで300万人が反対運動に立ち上がったというツイッター経由の情報は、実数は数十万規模だった模様である。対立候補のミル・フサインムサビが自宅監禁というのも、実際は政府監視の状態にあるというのが正しいようだ。また選挙管理委員会の委員長が、先週の土曜日に選挙は無効だと宣言したというのは、事実ではなかった。

4. Watch Your Back
(罠には気をつけよ。)

ツイッター上の情報が正確かどうかを確認するのも困難なだが、Twittererの中には、読者を欺こうとするものもいる。

映画カサブランカの舞台になった、ハンフリー・ボガード演じる主人公リックのカフェのように、ツイッターの中では、誰が本当は密告者や、スパイなのかをめぐる話題で騒然議論だ。長く続いているムサビ支持派のツイッターアカウントのmousavi 1388(1万6,000人のfollowerがいる)は最近、以下のようなツイートを発信した。警告http://www.mirhoseyn.ir/http://www.mirhoseyn.com/ は偽物だ。偽情報に気をつけろ。

予想されるのは、政府工作員が、大衆を欺くのにこういったアカウントを作ったという可能性だ。ABCNews.comはJim Sciutto記者からの情報に基づいた情報として、繰り返し流しているツイッターユーザーが、Sciutto記者が政府を支持しているように思わせるために材料を捏造していると発表した。Sciutto記者は、知らぬ間に犠牲者になっていたという。。

5. Twitter Is Self-Correcting but a Misleading Gauge
ツイッターは自己修正的ではあるが、誤解を招きやすいメーターだ。)

ツイッターは民主的な性格を持っているが、すべてのユーザーが平等というわけではない。人気があり、信頼されているユーザーの方が影響力は大きく、先述したように偽物と疑われた誰かを暴くパワーすら持ち合わせることになる。この意味で、ツイッターもまた、実際の世の中と同じくリーダーと派閥のあるコミュニティなのだ。

ツイッターは、中立的ではなく、特定の志向性を持つコミュニティである。具体的には、テクノロジーを愛好し、多くは、裕福で、西洋志向である。そのため、イランの大衆心理を判断したり、大統領選挙で誰が勝つかを分析するには、あまり適したツールとはいえない。イランの国内のどこかに多くの支持基盤を有すると思われるアフマディネジャド氏は、ツイッターコミュニティでは、まるで北朝鮮的ともいうべき、圧倒的敗北を被っているのだ。

6. Twitter Can Be a Potent Tool for Media Criticism
ツイッターはメディア批判用には強力なツールになりうる)

ツイッターが反政府運動を組織化することができるように、その放送能力は、人々を迅速かつ効果的に反報道機関側に糾合することも可能である。自発的な反対運動の一つが、#CNNfailというタグで分類され、イランの反対運動に関する報道が不十分だったして先週CNNを批判した。これは迅速にEメール運動になった。CNNは活字とオンラインでの報道に関して、自己防衛に必死になっていた。(以上)