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イランのツイッター革命

ニューヨークタイムスに、イランのツイッター革命という感じの記事が掲載された。
インターネットと法についての権威のレッシグの後継者である、ジットレインが引用されていて、ツイッターのなんとなく、からっぽで、無意味そうに見える特性が、今回の圧政との抗議運動の中では、強力な武器となっているという内容だ。

中東における、既存体制の圧制という図式は、どうもオリエンタリズム的なところがあるように思えてならない。だから、欧米側の報道を100%真に受けることはできないのだが、政府と反政府運動との対立のダイナミズムをインターネットサービスが大きく変えているところだけに絞って、読んで見た。Brad StoneとNoam Cohen名義の記事だ。

http://www.nytimes.com/2009/06/16/world/middleeast/16media.html?_r=1&ref=technology&pagewanted=print

今や四面楚歌状態のアフマディネジャド大統領の政府は国内のインターネット接続と通信を制限しようとしているが、生まれたばかりのインターネットサービスが、国によるメディア支配をてんてこまいさせる、新しい方法を反対派の人々に与えている。

反対派のイラン人は、ブログを書いたり、フェイスブックにコメントを掲載したり、抗議運動の日程調整をツイッター上で行っている。

こういった抗議行動の波は、金曜日の大統領選挙以来、どんどん高まっており、それに対応する、政府のインターネットへの制限や、検閲の動きも加速している。

全世界のツイッターコミュニティの中で、テヘランのデモがもっとも関心を集めるトピックになっている。ツイッター上で、月曜日のテヘランの平和的なデモ行進や、国中で起こっている市街戦や死傷者の写真がアクセス可能になっている。

mousavi 1388(1388はイラン暦の今年)というフィードが、対立候補のフサインムサビの支持者にとってバーチャルな広報オフィスと化している。このフィードには7000人以上のfollowerがいて、ペルシア語と英語で、デモに関するニュースと、戦い続けようという檄でいっぱいである。

フェイスブック上のムサビ氏のファングループは選挙当日から、どんどん増加して、今や5万人以上に膨れあがった。

このような自発的な反政府抗議行動を、ツイッター革命と命名するのは、もはや、使い古しの感もある。4月にモルドバで起こった抗議行動もこの名前で呼ばれた。

イランの重大な瞬間に、国内における重要な通信手段となったことを深く自覚した、ツイッター社は、月曜日に予定されていたメンテナンス用のサービス停止を延期した。

ツイッターのユーザーは、ツイートと呼ばれる短いメッセージを掲示する。#イラン選挙というような用語を使えば、ユーザーはこのテーマに関するすべてのツイートが検索可能だ。月曜日の夜には、ツイッターのこのタグには1分間に30以上の新しいポスティングが流れた。

ひとつのツイートの内容を見てみよう。

「イランで、我々の行動は全国紙によって報道されていない。誰もがムサヴィのメッセージを広めるのを助けなければならない。一人一人が放送局なのだ。#イラン選挙」

StopAhmadiという名前のツイッターのフィードは、「ムサビ支持者に対する専門ツイッター」と自分たちを呼んでおり。6000人以上のfollowerがいる。このアカウントは、写真のホスティングサイトであるFlickrのページにリンクして、テヘランの月曜日の騒ぎに関する数十枚の写真にアクセス可能となっている。

ツイッターユーザーの中には、攻撃を仕掛けるものまでいる。月曜日の朝、DDOSIranというツイッターアカウントを使って、反政府的な活動家が、サポーターに大量のトラフィックを送って政府のウェブサイトをクラッシュさせよと扇動した。

月曜日の午後までには、これらのサイトの多くが、攻撃が原因かどうかは不明だが、アクセス不能になり、攻撃の背後にいたツイッターアカウントは除去された。ツイッターのスポークスマンは、同社はアカウントの除去と何の関係もないと発表した。

こういった通信に対する取り締まりは選挙の日に始まった。この日、反対派にとっての組織化用のもっとも重要な道具であるテキストメッセージングサービスが政府によって閉鎖された。週末にかけて、フェイスブックやその他のウェブサイトに対する携帯電話からの送信やアクセスがブロックされた。

イラン人は月曜日にもテキストメッセージが送信できないと報告を続けている。

しかし彼らは、ビッグブラザーを回避する方法を見つけたようだ。

多くのツイッターユーザーは、政府の嗅ぎまわりをすりぬけるための方法を共有するようになっている。具体的には、ウェブブラウザーを、外国のプロクシーサーバーを経由して情報の配信を行うようにプログラムしているのである。

サンフランシスコに住む25歳のITコンサルタントは、イラン人を支援するために、自分のプライベートなプロクシーを稼働させている。そしてこれをツイッター上で宣伝している。月曜日に彼のサーバーは一時点で約750人のイラン人に対するインターネット接続を提供した。

「サイバーアクティビズムは、世界中の非民主的な府の支配下で生活している人々に力を与える方法になりうる。」と彼は言った。

中国で禁止された精神運動である法輪功に関係するインターネットプロクシーサービスであるグローバルインターネットフリーダムコンソーシアムは、検閲を回避するためのソフトウェアをダウンロード可能にした。先週、このサイトへのイランからのトラフィックは3倍になったという。

この組織の設立者によると、中国の場合は、こちらから大量にEメールを送る必要があったが、イランの場合は、イラン人が自分たちで、このソフトウェアを見つけ、口コミで広めていっているらしい。

インターネットの権威である、ハーバードロースクールの教授であるジョナサン・ジットレンは、ツイッターは、書きこむ経路も、電話、ウェブブラウザ、特殊アプリケーション等多様で、メッセージが現れる場所も同様に多様なので、検閲に対してかなり強靭なのだという。

こういったメッセージが新しい場を見つけるごとに、それが検閲の新しいターゲットになるが、弾圧したい体制側は破壊的な内容を含むインターネットアドレスを次から次へとブロックするモグラたたきに直面することになる。

ツイッターのフィードを世界中のあらゆる場所に共鳴させるのは簡単なのだ。ツイッターの無意味で、生煮えのように見える性質が、むしろこのメディアを強力にする。」と
ジットレンは言った。(以上)

インターネットが創世期に持った、自由のメディアという理想はもろくも崩れた。そして、そのアーキテクチャーによる支配のツールとしての色彩が強まっている今だが、そこには、この技術の持つアイロニーがあって、永遠のモグラたたきを生み出していくことになる。でも、だからといって、その先にあるのは、創生期のユートピアの実現ではなく、再帰的に学習を深める、アーキテクチャーによる支配の強化なのかもしれない。

しかし、ツイッターのいいかげんそうな外見がじつはその強靭さの源泉であるというところは、なかなか、イイ話のように感じた。