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映画「Wind River」近年稀な傑作!

2019年8月12日(月)

40年近く前のある酷暑の夏に、僕は、「八甲田山」という映画を観た。明治の陸軍の雪中行軍訓練で大部隊が豪雪の八甲田山で全滅するという悲劇を扱った、傑作映画である。

 

僕は、涼を求めてという、かなり不純な理由で、映画館に入った。強い冷房の中で、僕は、雪の中の悲劇を堪能した。

 

今年も酷暑で、まさに行き場がなくなった。

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昨日は、冷房を強くして家で、アメリカ映画「Wind River」を見た。公開時には映画館で見て、その後、もう何度目だろう。

 

涼を取るというには申し訳ないくらいの傑作である。

 


7/27(金)公開 映画『ウインド・リバー』

 

ネイティブインディアン居留区では若い女性の失踪、誘拐等正式の操作がなされない犯罪が無数にあるという事実を背景にしている。しかし社会派映画ではない。多くの西部劇、探偵映画の名作に直接つながる傑作だ。心の奥底まで冷気が行き渡るようだ。

 

舞台は真冬のワイオミング州のウィンドリバー居留地である。

若いネイティブアメリカンの女性が雪原で遺体で発見される。頭部に傷があり、性的暴行の痕跡もある。ラスベガスからFBIの女性警官が送られてくる。彼女は長い距離を逃げ、最後に力尽き、直接の死因は凍死と診断される。この状況では本格的捜査は続けられない。Elizabeth Olsenの演じる若い警官は、自らの意志で殺人操作を続けることを決意する。

 

そしてJeremy Renner演じる、自らも娘を同様な事件で失った過去のある野生動物のハンターに協力を依頼する。被害者の父親は、ハンターの友人だ。コマンチ族出身の俳優Gil Birminghamの娘の死を全身で痛む演技は鮮烈である。ハンターは友人から、法が裁かないとしても、加害者に報いを与えることを約束する。

 

野生の動物の足跡を追うように犯行の痕跡を探り続ける、その過程が素晴らしく魅力的である。

 

気丈さと心の弱さの間を触れる警官役を演じるElizabeth Olsenは魅力的だ。それを一定の距離を置いて支えるJeremy Rennerの演技も見事である。しかし何よりも、全身で娘の死を悼むネイティブアメリカンの父親を演じたGil Birminghamの存在感が圧倒的だった。




Elizabeth Olsen And Jeremy Renner Discuss The Film "Wind River"

徹頭徹尾、極寒の白い風景が展開する、Wind Riverは、いずれにせよ、近年稀に見る傑作だった。


八甲田山より<雪の進軍>